花模様

Club Logo 10月度 東北方面ツーリング

2016/10/15/Sat.〜10/16/Sun.

集合写真
 朝起きて窓の外を眺めると久しぶりに日の光に恵まれた朝がそこにあった。不純な天候が続いていただけにツーリングの当日天候に恵まれるととても幸せな気持ちになる。
 お湯を沸かし、珈琲の豆を挽き、夕べ準備した旅仕度に抜かりが無いか頭の中で点検しながら珈琲を楽しむ。出掛ける前ののんびりした時間を過ごすのも旅する事の旅程の一部なのだ。準備や帰宅してからの整理なども含めて旅なのだと何時も思う。

 東欧を、とりわけチェコの首都プラハを訪れる度に思うのは、人口100万を超える大都会であるにも関わらずこの地の人々が「森の民」だと感じる事だ。四方を海に囲まれた日本人の私達には、四方が陸続きの他国で囲まれた国の民の感覚がなかなか想像出来ない。ただ彼等は四方を我々が海で囲まれている様に、森で囲まれた国に暮らしているのだと言うことは出来る。遠くドイツのシュヴァルツヴァルトに続く深い森と共に暮らすこの地の人々もまた秋の木々の葉の色づきや移ろい行く季節の変化を感じ、あるいは愛で、時には憎む事さえあるだろう、我々と同じ様に感じるだろと思う。
 東北へのツーリングも深まりゆく秋に出会う為に出掛ける旅なのだとプラハ城の色づく木々の事を思い出しながら、幾度となく訪れた裏磐梯への道程を頭に浮かべる。

プラハ なぜ、いきなりプラハの「森の民」の話しになるのか訝しく思われるだろう。その訳は幹事のH氏の遅刻にある。「寝坊した!」とは集合場所の五百川パーキングエリアに遅れて到着したH氏の第一声である。急ぐ旅ではないし、この後どこかを訊ねる予定も特にない緩やかな旅程のツーリングだから遅刻が問題になることはまったくないのだが、寝坊などと子供の様な遅刻の理由なので笑ってしまった。その寝坊の理由は時差ボケなのだと言う。10時間も寝たのにまだ寝足りないと言っていたが、その感覚や疲労感は帰国して多くの人が感じるものだ。で、どこに行って来たのかの話しになったらプラハ、ウィーンを中心とした東欧だと言う事だった。「森の民」の国々を旅して、帰国したら直ぐにクラブのツーリングで森の中を旅するなんてご苦労な事、いやいやなかなか羨ましい事ではある。森林浴漬ではないか。さぞかし健康になるに違いない。そんな訳でプラハの話に至った。
五百川SA 五百川SA
 五百川には4台のクラブ員のエランが集合した。取り合えずホテルまではこの4台で全部だ。全車フェンダーが四角に切れ込み、ジャガーの四角なテールランプを奢ったSr4だ。本当はゲストの東北江蘭会のK氏のSr3エランが参加するはずだったが、笑い話のネタになる様な理由で参加出来ず、ご本人はH氏の助手席に乗っての参加となった。
 笑い話のネタは、昨日出発の準備をして荷物まで積み込んだのだが、ふとフロントガラスの車検のステカーを見ると車検が切れているのを「発見」したのだそうだ。慌ててH氏に連絡しナビシートの確保に至ったのだが、そこまで努力?してツーリングレポートの話題作りに協力してくれなくてもと苦笑してしまった。教訓めいた事を言えば、車検切れに気が付かなかったと言う話は結構聞く話なのでクラブ員の皆様もご注意くださいます様にお願いしますと言うところだろうか。

 H氏、N氏、W氏、私と4台のエランを連ねて目的地のホテルグランデコに向かって高速道路を走り磐梯熱海ICで下道に出た。それにしても今年は暑さが続いたせいか紅葉の訪れが遅い。まだようやく木々が色付き始めたばかりで、秋の東北を旅している気分の高揚感が薄まってしまう。

 何時もウィーンに長逗留する時に泊るホテルは「野薔薇」や「魔王」「冬の旅」で有名な歌曲王フランツ・シューベルトが洗礼を受けたリヒテンタール区教会近くのホテルに決めているが、そのホテルからシューベルトの生家へ行く道すがらは閑静な住宅街になっている。その一角に琥珀の装飾品を扱う小さな店があり、たまに寄って高価ではないお土産を買い求めたりする。そのおりに如何にも高価そうな琥珀の工芸品を手に取って見せて貰いため息をついたりするが、その琥珀の色の彼方に何時も思うのは不思議に日本の東北地方の秋の色づく紅葉の風景だ。つくづく日本人なのだと国際人には程遠い自分を振り返ってみる。こんな事をふと思い起こすのもH氏の東欧旅行の寝坊のせいかもしれない。

 その琥珀の彼方に見える東北の木々の色付きが「足りない!」ではないか。地球の温暖化が何時もある風景をさえ変えて行こうとしているとクラブのツーリングに来ているのに走りを楽しむとかせずに、大仰な地球の未来に想いが巡る。私達は取り返しの利く地点にまだ、踏みとどまっているのだろうか?
道中にて コンビニ 道中にて
  磐梯熱海ICから県道24号線を北に向かう。開けた周りの風景がやがて山地になり高度が上がって来るとそれなりに楽しめるワインディングロードが始まる。紅葉が足りないのは残念だが今年は道を覆う落ち葉が無い為結構楽しく走れる。エランはいつもの様にあまり重さを感じさせない回頭性を発揮して次々とコーナーをクリアーして行く。くしくもロータスのメークスクラブのツーリングなのにエランばかり4台が集まったツーリングとなった。やはり東北は関東以南からは遠く大変なのかもしれない。M100エランでワンデイ参加のつもりだったNK氏は時間的に無理との事で参加を見合わせたのでお会い出来なかった。毎年東北ツーリング参加車両がエランばかりなのは何となく寂しいものだ。

 県道から国道115号線に出る途中で右に曲がるT字路の交差点に差し掛かった。一時停止した時、前を走るW氏のテールランプのブレーキが点灯している時ウィンカーの光が薄ぼんやりとなったのに気が付いた。あれ、電気が足りない?のではと心配になったが、走り出すと後ろから見る限り問題ない様に感じた。昨年、オルタネーターが御臨終になり電気では苦労したのでこのところ妙に電気には敏感になっている私であったが、気にし過ぎだろうと思った。
国道115号線に出て途中のコンビニエンスストアーで、夜の二次会のつまみを仕入れるとホテルに向かった。W氏のエランも問題なく走り出した。一時的に電気がどこかに遊びにお出かけしただけの様だと安堵した。コンビニエンスストアーで車検切れを「発見」して身体のみ参加になったゲストのK氏を乗せて走り出した。助手席に乗ると各車の違いが良く分かるのだそうで、4台のエランの乗り比べをK氏は助手席で楽しんでいた。K氏のSr3エランのエンジンはオリジナルの105馬力仕様でもう少しパワーが欲しいのだそうだ。乗り比べて見ると4台共に自分のエランよりパワーがあり楽しそうなのでカムを変えて見たいと言う。
 ヘッド加工無しで付くスプリントカムとかチューニングカムなどが良いのではなどと、久しぶりにチューニングの話しで道中盛り上がった。ただ、今回参加したW氏のエランのエンジンはオリジナルのビッグバルブエンジンなのだが、素晴らしくパワーが出ているのだ。当たりのエンジンだと、きっちりカタログ数値以上のパワーが出てくれるのだろうからむやみやたらに部品を変えれば良いと言うものでもなさそうだ。
 小野川湖を左手に眺めながら湖畔のワインディングロードを駆け上がるとホテルグランデコへ到着した。エントランスで荷物を下ろしホテルマンに預け駐車場に車を回そうとすると、前のW氏のエランが動き出さない?一時的にエンジンがからなかったが何とか始動したので駐車場の脇にある素晴らしい芝生の風景の中に4台を並べて写真撮影して駐車場に車を止めた。4台のエランが無事駐車場に到着出来て一安心と思ったら、W氏のエランのエンジンがまったく始動しなくなった。
 スターターが回らずウンともスンとも言わなくなったのでバッテリーのトラブルであろうと予想された。バッテリーのマイナスコネクターの緩みが発見されたので原因はそれかとも思えたが、昨年オルタネーターの故障で辛苦を味わった身としてはオルタネーターの故障も考えられると思いまずテスターで測定してみようと思った。
 しかし、なんと言う不用意であろうか!テスターは持っているが、テスターの内蔵電池が切れていて役に立たない!しかもあまり売っていない9ボルトの角型電池!その時幹事のH氏宛に後からホテル到着の予定のゲストのKO氏から到着時間の連絡が入った。渡りに船である。途中で電池購入を依頼した。W氏のエランもバッテリー切れ?私の持っているテスターもバッテリー切れ!笑い話が増えてしまった。せっかく持っている道具を使える状態に維持管理していないのは恥ずかしい限りだ。
 駐車場でジタバタしている内に今夜同宿するもうひとりのゲスト、昨年のツーリングでは幹事役をしてくれたI氏がロータス・コルチナで到着。いや、コルチナ・ロータスか?
えっ、コンサル・コルチナ???知識が無くて申し訳ない。
ジタバタする助人の人数は増えたが、取り敢えず駐車場にいても進展は望めないので、ホテルにチェックインして落ちつくことにした。例によって大浴場で温泉に浸かり日ごろの疲れを癒した後幹事部屋に集まった。N氏が何時ものスペシャル牛久ビールを、その他例によって飲み切れない量のアルコールが各メンバーから差し入れされたので、夕食時間までの間の酒盛りとなったのは言うまでもない。相も変わらずである。クラブロータスでは無く「クラブ酒飲みおっさん」である。いや人生は楽しいものだ。乾杯!
ビールと言えばH氏がこの度訪れたプラハは又、ビールの旨い街でもある。ミュンヘンのビールはあまりにも有名だが、プラハのビールも負けていない。ヴァルタバ川のほとりにチェコの国民的作曲家スメタナの像が立っている場所があるが、像までの道の片側が観光売店、観光食堂になっていてもちろんビールも飲める。そんな観光客向けの所でさえ、ビールは非常に旨い!ツーリングの最中H氏に聞き忘れたがプラハでは、多分かなり美味しいビールを飲みあさったに違いない。もちろんN氏差し入れの牛久ビールも負けてはいない。あっという間に無くなってしまった。「クラブ酒飲みおっさん」はロータスの走りを楽しむよりこちらの方が良い様だ・・・。

 ここでちょっとした事件を報告しておきたい。煙草を吸いたいメンバーが内線でホテルのフロントに灰皿をお願いしたところ宿泊している部屋は禁煙室でありベランダで吸う事も遠慮してくれと言う事だった。喫煙出来る部屋が空いているか確認しようかとの話し向きになったので面倒なので吸わない事にした。いやいや、喫煙者にとっては本当に肩身の狭い世の中になったものである。
 もう何十年も前になるがウィーンを初めて訪れた時にどこの地下鉄駅の入り口にも設置されていた直径1メートル〜1.5メートルはある巨大な灰皿にびっくりした事を思い出した。まだ火が点いた煙草からもうもうと煙が立っていた事を鮮明に覚えている。欧州人のメンタリティーの違いに驚きはしたが煙草が当たり前の時代と比較するとかなり時代は違ってしまったと思う。ある時点、1990年代後半からだろうか、ウィーンの地下鉄の駅から急速な勢いで巨大灰皿が撤去されて行ったのを覚えている。1992年にオープンしたグランデコにおいても多分急速に禁煙化が進んだに違いない。H氏の東欧旅行の話が、禁煙の事でも欧州の地の事を思い出させてくれた。なんだか昔の事ばかり思い出してロータスでツーリングに来ていると言う気分に酔えないのは年とったせいだろうか。お酒には酔ったが。

 ゲストのKO氏から夕食の始まる6時半に間に合わないと言う連絡が入った。電池など頼んだ為かと思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになった。KO氏には申し訳ないが先に食事を始めさせて貰う事にしてレストランに行った。今回は和食である。「クラブ酒飲みおっさん」達は早速お酒の選定を始めた。私は日本酒には不調法なので皆様にお任せである。酒が飲めれば何でも良い、などと言う事ではけしてないので誤解無きように。
 乾杯で食事が始まったが、楽しい話題こそ乱れ飛んだが、ロータスや自動車の話はほとんど出なかったはずだ。酔ってしまったので詳しく覚えていないが・・・。むしろ車のクラブだから車の話ししかしない、いや出来ないなどと言うのはいただけないのかもしれない。途中からKO氏が到着し食事に加わって宴は盛り上がった。KO氏はポルシェで来てくれた。ラウンジ電池は無事ホームセンターで入手してくださったので感謝である。
 デザートは場所を移して頂く事になりデザートと珈琲を雰囲気の良いラウンジで頂いた。ゲストのKO氏のお譲さんがオーケストラでヴァイオリンを弾いてらっしゃると話を聞いたので暫くヴァイオリン談義に花が咲いた。
 
 さて、買って頂いた9ボルトの電池をテスターに取り付けると無事テスターは稼働したので検査出来るところは検査する事にした。ところで夕食も終り部屋に戻って来たところでW氏の重大発言が飛び出した。「充電器は持っているよ。」である。バッテリーが逝ってしまったかもしれないのだから充電器の存在は地獄に仏ではありませんか。さらりと言われても笑い返すしかない、と言うよりもそれは真っ先におっしゃって下さらないとならない情報ではありませんか。早く言って下さいよ。笑い話しが又、追加された東北ツーリングの夜である。
  チャージ中   
 ホテルの荷物用の台車を借りると駐車場に行きバッテリーを測定したが12.52Vあった。まったくセルが回らない程、放電している数値では無いのが不思議だった。バッテリーを外し、充電器と共に借りて来た台車に積みこむと幹事のH氏の部屋に戻り充電器をセットした。充電が始まり、確かにバッテリーの半分くらいは放電してしまっている事を充電器のゲージが表示したので充電器の存在は何物にも替え難いありがたいものであった。満充電されれば何とかなると思った。
 持参したお酒と酒の肴を囲み「クラブ酒飲みおっさん」の二次会での話は弾み気が付けば12時近くになっていたので解散して眠りに就いた。遥か300キロの走行の疲れとお酒のせいであっという間に意識が無くなっていた。W氏のエランがトラブルを起こしたままなのに、平和なものである・・・。
会津磐梯山
  翌朝は6時頃目が覚めた。温泉旅行の楽しみは朝風呂に違いない。早速大浴場の露天風呂でひと風呂浴びて同室のW氏、N氏と朝食となった。バイキングの朝食だったが、W氏とN氏はパンなどの洋食、私は焼き魚と納豆の和食を皿に盛り付けた。珈琲を二杯飲み、それなりにのんびりした。バッテリーさえ満充電されていれば大丈夫と信じていたのでまあこの時点では余裕があった。
 W氏は用事があり8時には出立したいと言う事なので充電の完了したバッテリーを取りに幹事のH氏とゲストのK氏の部屋にいった。本日日曜日だけ参加のO氏が到着したところだった。今回は何とアルピーヌA110で参加と言う事だった。後程ゆっくり拝見させて頂く事にして挨拶もそこそこにバッテリーを運ぶと取り付け作業を行った。
 一発始動であると言いたいところだったが、なんとスターターがウンともスンとも言わないのは昨日と変わらなかった。バッテリーは満タン充電である!ブレーキランプが点灯中はウィンカーが薄ぼんやりである→スターターが回らない→バッテリーのマイナス端子が緩んでいた→バッテリーが放電したしまった→充電器を接続すると確かに放電しており充電状態になった→充電完了のバッテリーを接続したがスターターがまったく反応しない→スターターモーターが故障した?などと冷静に分析などしている状況ではない。W氏は急ぎ帰宅したい用件があり、又、例え用件など無くてもまったく動かなければ帰る事が出来ない。昨年に引き続き今年も1台JAFに頼んでローダーで御持ち帰りになるのか。
 しかし、少なくともコンビニエンスストアーまでは順調に稼働したスターターモーターが小一時間ばかりのホテルに移動しただけの短時間で壊れる事があるだろうか?スターターモーター本体が壊れたのではなく、スターターソレノイドが壊れたのではないかと意見が出た。成る程、さすがは愛車の故障で場数を踏んで来た「クラブ酒飲みおっさん」達である。だが、ソレノイドの故障だと厄介だ。頭に浮かんだのはソレノイドを分解し磨いて直すやり方だが、分解出来る構造になっていたか?
 この時奇跡が起こった!目の前に旧ルーカスの赤い紙箱に入った新品のスターターソレノイドが降臨したのだ?いや、冗談では無い!確かにH氏が手に持っているのは新品のスターターソレノイドだった!それもルーカスの旧デザインの紙箱に入ったソレノイド様である。何でこんな物があるの?H氏いわく、エランを手に入れた時スターターソレノイドが故障する事があるので積んで置く様に言われたので昔買って携帯していたとの話であった。何気ない話の様だがこれはすごい事だ。こんな部品まで持っている事が尋常ではない。昨年のローターと言い今回のソレノイドと言い平気で出て来るのだ。尋常で無くして何と言えば良いのだろう。「クラブ酒飲みおっさん」はドラエモンの四次元ポケットか。
 まあ、驚いたり感心している時間はないので早速、取り付けた。グランドアースの取り間違いとか多少手間取ったが何とか装着は出来た。一発始動である・・・。あれ、ウンともスンとも言わないではないか。ここにきてやっとスターターモーターそのものが故障しているのだと判明した。ギアが噛んでしまっているのだろうか。だがW氏に聞けばスターターモーターはオリジナルのベンディックスからリダクションに変えてあるそうだ。だとすると、噛み込み現象はあまり考えられないのでショックを与えて噛み込みを外す方法はあまり有効とは思えないが、やるだけの事はやってみる事にした。
 下にもぐり、鉛ハンマーでガンガンガン、4分の3拍子でひっぱたく。さあどうだ!一瞬スターターがガチンと音を立てたが、その後は静寂の世界である。秋の紅葉の始まりの凛とした大気とくっきり晴れ渡った空から降り注ぐ陽の光が静寂の中で柔らかく大地を愛撫してゆく。などと静寂に浸っている場合では無い。要するにスターターモーターが完全にいかれちまったのだ。
 こうした時の定石は決まっている。押し掛けである。古典的な方法だが、かなり効果が期待出来る。バッテリーは満タンだから恐らく掛るだろう。で押しがけを駐車場内で開始した。いくらエランがライトウエイトでもあまりやりたくない作業だ。人数が多いとはいえ「クラブ酒飲みおっさん」要するに体力の減退したおじさん達の押しがけである。ヒイヒイ言いながら駐車場内運動会が始まった。周りからみていたらさぞかし愉快な光景だろう。いや愉快を通り越して滑稽に見えるかもしれない。
 しかし、何回かのトライでエンジンが始動した。すかさず、オルタネーターの発電電圧を測定すると14.3Vでオルタネーターは死んでいなかった。これならエンジンさえ止めなければ帰れるが、途中の休憩などエンジンを止めない訳にはいかないので困った。
 だが、W氏はこれで帰るから大丈夫だと言う。但し、ガソリンは補給しなくてはならないから、念の為に麓のガソリンスタンドまで同行して欲しいと言うのだ。この程度のトラブルは日常茶飯事の様な感じだ。ただの「クラブ酒飲みおっさん」では無い訳で、かなりの修羅場を経験して来てこその不敵な判断である。出発を早める事にすれば良いのだが、H氏他、まだ朝食を食べていないメンバーがいる事が分かり、I氏のコルチナにN氏が同乗し伴走してW氏とガソリンスタンドまで同行する事にして貰った。無事に帰宅できる事を祈ってW氏とはお別れとなった。9時過ぎにW氏はコルチナの伴走で帰路に就いた。予定より1時間遅れで出発だが、1時間しか遅れなかったと言うのが正解だろう。暫くするとコルチナが戻って来た。W氏はとにかくガソリンを補給して帰路に就いたとの事である。無事の帰還を祈るしかない。*その日の夕方無事帰還したと連絡を貰い安堵した。
記念撮影" 会津磐梯山
MGB A110
 さて、3台のエランとコルチナ、ポルシェ、アルピーヌと6台で本日の目的地に晴れ渡った空の下、10時過ぎにホテルをチェックアウトして向かったのは、アルピーヌで参加のO氏御推薦の素晴らしい景色が楽しめる某ホテルのラウンジだった。ほぼ地元のO氏も最近まで知らなかった絶景だそうだ。
 N氏がいそいそと自分のエランのキーを今回身体だけ参加のゲストのK氏に渡しているので何かと思ったら、自分のエランはK氏に預け、O氏のアルピーヌの助手席に乗って出発である。「アルピーヌに乗ってみたかった。」と言う事だった。こうした異文化交流ならぬ異車種交流もツーリングの楽しみだ。
暖炉
オフェーリア
 その某ホテル、人には教えたくない、一人占めしておきたいに様なホテルである。
裏磐梯高原ホテルのラウンジの大きな窓には芝生の庭園とその先にある弥六沼、森の木々の彼方に会津磐梯山が見え、程良く色づき始めた木々と相まって確かにO氏御推薦の素晴らしい風景が広がっていた。チーズケーキと珈琲を頼み、真冬には大活躍してくれるだろうまだ火の入っていないストーブの周りに座ってのんびりと過ごした。
 明るい陽の光の中だが、目の前の弥六沼は沼特有の若干暗い雰囲気を漂わせていた。コルチナで参加してくださったI氏が郡山市で開かれていた美術絵画展の話をしてくださり暫く絵画の話題になったが、その沼を見ていて突然、私の頭に季節感は若干違うが一枚の絵画が浮かんだ。「オフェーリア」と言う題の絵画だった。今年没後400年のウィリアム・シェークスピアの戯曲『ハムレット』で川面に浮かびやがて死んでゆくオフェーリアの姿を描いた幻想的で美しいが恐ろしくもある絵画である。さて一向に作者の名前が浮かばない。I氏に聞いたらさすがである。「ジョン・エヴァレット・ミレー」とすかさず作者の名前が返って来た。共にツーリングさせて頂きこうした会話が出来るのもロータスと言う車を通しての楽しみであり、一台の車が人生のいくばくかを喜ばしい物に変えてくれるのだと嬉しく思った。ようはロータスに乗っていて人生が豊かになったと言う事だ。感謝!
裏磐梯高原ホテルにて   裏磐梯高原ホテルエントランスにて
裏磐梯高原ホテルより
 楽しい時間は何時も「光」より早く通り過ぎて行く。のんびり美しい景色とケーキと珈琲を楽しんだ後、本来ならば昼食と言う事になるが、N氏と私は遠方でもあり昼食を取らずに帰路につくことにした。ホテルのエントランスで車を並べて記念撮影後、H氏、東北江蘭会の方々とお別れして、一路帰路に就いた。N氏と私、来た時と同じ2台のエランで途中阿武隈SAで昼食を取り磐越道、常磐道、牛久ジャンクションでN氏とお別れして何とかまだ陽のあるうちに帰宅出来た。今回は行き帰りの冒険は残念ながら?なかった。

 H氏の東欧旅行の話のお陰で私も彼の地を訪れた日々が思い出され、今回のクラブの東北ツーリングは何時もと違った想いがいろいろと浮かんだ。楽しかったのは無論だが、川面に浮かびやがて死んでゆくオフェーリアの事が思い浮かぶなど何か、ただワインディングロードを走り回るとか、あちらこちら見学して回ったりする楽しみ方とは違った、時間を過ごす事も良いものだと思った。
 今回、同行した参加者も同じ様な感じ方だったのだろう、走り足りないとか、あそこに行きたい、こちらに行きたいと言う話は出なかった。ただ、移動の為に少しスロットルを多めに踏み、到着したところでのんびりし、宿泊したホテルで旨い酒を御馳走になる、そんなツーリングでも十分満足出来るものなのだと思った。
 もちろん歳取って行動力が鈍ったからなのだと言うことは無い!いや無いと思う、うーん、まあそう言う事は無いだろうとして、ツーリングのレポートの筆を、いやキーボードを置くけれども、その前にH氏の東欧旅行に鑑みて私の好きな詩ともつかぬ文章を記して終りにしたい。神聖ローマ帝国皇帝、東欧ウィーンを首都としたハプスブルク家の皇帝マクシミリアンT世(1459〜1519)の言葉である。
 
   私は生きている  しかし、 何時まで生きるのかを知らない。 
   私は死ぬ      しかし、 何時 死ぬのかを知らない。
   私の旅は続く    しかし、 どこへ行くべきかを知らない。
   不思議な事に    私は幸せだ。

 素晴らしきロータスとロータス仲間と共にある人生に乾杯。
メロメロな会員

文責:古屋 和紀



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